カレンダーは12月上旬発送予定です
西オーストラリアのシャーク湾/オーストラリア(1991年 自然遺産)
EOS R6 Mark II RF24-70mm F2.8 L IS USM 1/500秒 f8 ISO800
世界遺産の撮影のために、この一年、世界各地を旅した。コロナ禍の収束により世界への扉が再び開いたわけだが、旅先で直面したのは世界各地で顕在化するオーバーツーリズムや気候変動等の問題であった。
雨が全く降らない乾季に大雨が降って氾濫する川や、季節外れの濃い霧によって閉ざされる山々。一連の撮影は不安定な天候に左右され、予定通りに進んだものは少ない。なんとかシャッターを切るに値する瞬間が巡ってきたかと思えば、オーバーツーリズムによって引き起こされる渋滞に巻き込まれ、撮影のタイミングを逃すこともあった。
それでも諦めずに歩み続け、ひとつひとつ拾い集めていった光景で構成されたのが、このカレンダーである。旅路の果てにたどり着いた世界遺産は壮大で、我々に自然の豊かさや厳しさを提示し、改めて世界は美しいのだと認識することができた。
世界遺産は、人類が共有すべき顕著な普遍的価値を有する文化遺産や自然遺産の保全を目的としている。世界遺産に限らず、地球上の美しい自然を未来へと残すことができるのかどうか。いま、ひとりひとりにその在り方が問われている。現在、我々が置かれている状況について改めて考えるきっかけとなれば思い、本カレンダーを構成した。
ひとつだけ、印象に残っている瞬間を挙げるとすれば、ナミブ砂海で迎えた夜明けだろう。太陽が砂丘の向こう側から昇ると、砂海は淡い桃色から輝かしい黄金色、そして燃えるような赤へと移り変わる。そのとき、波打つ赤い砂海に立つ私の足元に小さな植物が芽吹くのを目にした。私はその小さな緑に自然の息吹を感じ、光を見たような気がした。
いつまでも変わらず、この美しい光景がそこにあり続けることを願う。
写真家竹沢 うるま
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竹沢 うるま(たけざわ うるま)プロフィール
1977年生まれ。写真家。
同志社大学法学部法律学科卒業。大阪芸術大学客員教授。
在学中、アメリカに一年滞在し、モノクロの現像所でアルバイトをしながら独学で写真を学ぶ。帰国後、ダイビング雑誌のスタッフフォトグラファーとして水中撮影を専門とし、2004年よりフリーランスとなり、写真家としての活動を本格的に開始。
2010年〜2012年にかけて、1021日103カ国を巡る旅を敢行し、写真集「Walkabout」と対になる旅行記「The Songlines」を発表。2014年には第三回日経ナショナルジオグラフィック写真賞受賞。2015年に開催されたニューヨークでの個展は多くのメディアに取り上げられ現地で評価されるなど、国内外で写真集や写真展を通じて精力的に作品発表をしている。
主なテーマは「大地」。そこには大地の一部として存在する「人間」も含まれる。近著にチベット文化圏をテーマとした写真集「Kor La」(小学館)や「旅情熱帯夜」(実業之日本社)がある。
「うるま」とは沖縄の言葉でサンゴの島を意味し、写真を始めたきっかけが沖縄の海との出会いだったことに由来する。