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“粋”の世界をあなたのカメラライフに。「東京くみひもカメラストラップ」誕生秘話をご紹介!
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“粋”の世界をあなたのカメラライフに。「東京くみひもカメラストラップ」誕生秘話をご紹介!

公開日:2020/12/17 / 最終更新日:2021/10/20

カメラをテーマにした伝統工芸品をキヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)がデザイン監修するシリーズ。
その記念すべき第一弾「東京くみひもカメラストラップ」の生みの親である「龍工房」福田隆太氏と、「アルヴォリ」萩島貴氏のお二人に商品開発の経緯や商品に込めた思いについて、お話を伺いました。

龍工房 福田隆氏(左)、アルヴォリ 萩島貴氏(中)、龍工房 福田隆太氏(右)

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東京くみひもカメラストラップに関して
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キヤノンMJ担当者

福田(隆太)さん、萩島さん、本日はよろしくお願いします。さっそくですが、創業間もないアルヴォリと創業131年の龍工房が出会ったきっかけは何だったのでしょうか?


萩島氏

日本のものづくりの伝統や技術、日本文化をもっと広めたいという思いでアルヴォリを2017年に設立しました。日常的に永く使えるものが好きで、 日本の職人が作る伝統工芸品の魅力に惹かれていきました。伝統だけにこだわらず、現代の要素を取り込むことで今の時代に合った新しいカタチを生み出すことに挑戦しております。


現代の要素を掛け合わせるために、職人と企業とのコラボレーションに取り組んでおり、その想いにキヤノンMJさんが共感してくださり、 カメラストラップを作らせていただけることになりました。そして、作り手である職人さんを探す中で、伝統を守りながらも新たな技術革新、商品開発に取り組まれている龍工房の存在を知り、 連絡を取らせていただいたことがきっかけです。


福田氏

その時は父が電話に出て、とりあえず一度工房にお越しくださいということになりましたね。伝統工芸の多くは時代が変わっていく中で、その変化に対応できず埋もれている現状です。 江戸組紐も着物に使うものという、奥ゆかしいものとしてのイメージに
埋もれていました。「何かしなきゃいけない」という気持ちがあった中で、萩島さんのお話に共感したことが始まりですね。


キヤノンMJ担当者

時代に合わせて「変えていく」という共通意識があったのですね。


福田氏

そうだと思います。「職人気質」とよく表現されることがありますが、自分の技術で表現したいと頑固になっていたところに、
時代に合わせてもっとこうしたらいいのではないかと、職人とは違う視点を持ちながらも同じ目線で話を聞いてくれる萩島さんの
人柄に対しても次第に信頼を寄せるようになりました。


萩島氏

色々な工房を回りましたが、後継者問題など現状を維持するだけで良いと考える方も多くいました。その中で、福田さんは当時から「君の名は」のブレスレットを再現したり、組紐でボールペンを作ったりと、 組紐の新しい形を生み出すことへの挑戦をすでに始めていたことがとても印象的でした。また、最近では2019年のラグビーW杯のメダルテープの制作にも関わられておりましたが、組紐を世界へ発信したいという点にも大きく共感しました。



組紐の存在、その魅力とは

キヤノンMJ担当者

お二人にとっての組紐の魅力とは何ですか?


萩島氏

絹が肌に馴染む感触や、引っ張ったときの絹のきしむ音がたまりません。組紐は組み方によって固くしたり、柔らかく伸縮するように作ることができます。 特にカメラストラップの試作品を首に掛けて引っ張った時、「ギュッギュッ」という音と手触りに感動したことは今でも鮮明に覚えています。


福田氏

紐が様々な形へ姿を変えて人の役に立つ仕事はなかなかありません。世の中の素材の数だけ、組紐の可能性があるところが魅力的だと感じています。

キヤノンMJ担当者

正絹が組紐の主となる素材ではないのですか?


福田氏

伝統的には絹が主役ですが、私は空気と水以外なら何でも組めるのではないかと思っています。木や竹、アルミを薄くして組んだこともあります。 一日中組紐のことを考えていますね。これをこうやってああやったらこうなるんだろうなとか、全てに組紐の
理論を当てはめて考えてしまいます。


キヤノンMJ担当者

面白いですね。構造と素材をセットで考えているからこそできる発想ですね。では、福田さんが組紐の道に進むことを決めた瞬間はいつだったのでしょうか?

福田氏

物心つく頃から身近なものとしてありました。幼少期は組玉(組紐を組むときに使う重り)を放り投げて遊んだりして、よく怒られていたものです。修行は中学生の頃から自然と始めていました。 組紐の道に進もうと思ったのは大学生のときです。東京都知事認定資格である「東京都伝統工芸士」に父が認定されたことが大きかったと思います。職人として道を追求していくのが自分の道だと感じました。


キヤノンMJ担当者

組紐職人として活動していく中で、大切にされていることや習慣などはありますか?


福田氏

本業の(着物の)帯締めは、主に女性の方が身に付けられるものなので、お客様の声を聞くことを心がけています。そして、その要望に応えることができる技術力を日々磨いております。 紐の質感に影響するので、作業をする時には、気温や湿度も必ずチェックします。お客様が期待している以上のものをお届けして「これだよこれ!」と言ってもらえることが何よりうれしいです。



東京くみひもカメラストラップ誕生の裏側

キヤノンMJ担当者

2018年10月、「カメラストラップを組紐で作りたい」とおっしゃった萩島さんの衝撃的なご提案は今でも覚えています。 今だからお話しできますが、最初は全く想像がつかなくて正直サンプルを見るまでは半信半疑という感じで…。自信はありましたか?


萩島氏

試作品を触っていただければ納得してもらえると思っていました。覚えていますか?


キヤノンMJ担当者

よく覚えています。(笑)首に掛けて引っ張って「おおお!音がする!」と騒ぎました。 そのプロトタイプと比べると、最終形はかなり進化がありましたね。何があったのでしょうか?


福田氏

はい、最初は丸組(まるぐみ:綱のように円形に組むこと)にするか平組(ひらぐみ:帯のように平らに組むこと)するかというところから始め、丸組だと首に負荷がかかると考え採用しませんでした。 さらにそれを平物を袋状にして提案しました。それが最も絹の伸縮性を感じていただける組み方だったからです。

萩島氏

その後、色や長さなど、最終デザインがほぼ決まってきたときに、ストラップの両端にワンポイントで入れた金糸や銀糸が首にチクチクあたる感じがありました。 決して安価なものではないので、ちょっとでも使い心地に違和感があればそれを福田さんにフィードバックしていました。


福田氏

デザインを損なわず、絹の特性もできるだけ活かすために袋状ではなく、縦横に格子のように一枚の帯状にする一間組(いっけんぐみ)に切り替えました。 さらに一間組の端の部分だけ二重構造にすることで表面だけに金糸や銀糸が現れるようにしました。


キヤノンMJ担当者

それが今回の「斜格子一間組(ななめこうしいっけんぐみ)」になっていくわけですね。


福田氏

はい、一間組は聖徳太子の束帯などに使われていた伝統的な組み方の一つであり、奈良の正倉院宝物殿にも斜格子一間組の束帯が保管されています。 さらに斜めに組むことで、両端の二重構造になった部分の厚みを目立たなくさせる効果があります。

正倉院に保管されている束帯(下図)



ユーザーの声がヒントに。作るものは「体験」だった。

キヤノンMJ担当者

最も苦労された点は何でしたか?


萩島氏

一番苦労したのはやはり、現存するカメラストラップとは原価も違いますし、いかに一線を画すものにするのかという点でした。 参考までにお借りした御社のストラップは、長さ、幅、裏生地の滑り止めに至るまで、見れば見るほど商品として完成されていることが分かりました。


キヤノンMJ担当者

たしかに今までお話いただいた組紐やその素材となる絹の伸縮性や滑らかさは、従来のカメラストラップの機能と矛盾する部分が多いですよね。


萩島氏

はい、そこで4つのデザインのカメラストラップから好みを選んでいただくというシンプルなアンケートを御社にご協力いただきました。 コメントの中に「気分を変える」、「他と違う」、といったキーワードが目に留まりました。そして5,000名以上の回答から求められているものはカメラストラップを掛けるときの「新しい体験」だと気づきました。


キヤノンMJ担当者

変化を求めるお客様に対してどのような体験を東京くみひもカメラストラップで作ろうと思いましたか?


萩島氏

「こだわりがある自分」に変身する体験です。ただ、良い職人が作った、高級品を買ったというのではなく、まずは木箱を開けるというドキドキ感に始まり、職人の手作りによるオリジナリティのあるデザイン、そして何より絹の肌触りと引っ張るときのギュッという快感。 その全てを他の人とも共有したくなるような、普通の機能的なカメラストラップとは全く違った体験を作ることを意識しました。大切なカメラをかけるときに、目、耳、肌で「感動」を手に取っていただいた方にも感じて欲しいと願っています。


福田氏

そのために妥協のない商品作りを一緒にすることができたと思います。触らないと分からないこともありますので、できるだけ
多くの人に触れていただきたいと思っています。使ってもらうことで組紐の「用と美」の両方を体感していただきたいです。


キヤノンMJ担当者

伝統と変革で進化を続ける福田さん、新しい切り口と発想で日本文化を広める萩島さん、本日はありがとうございました。

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