鉄道写真家の長根広和です。EOS R5は最高約12コマ/秒のメカシャッター、信頼できるAFシステム、そして「動きもの」でもなめらかに表示するEVF(電子ビューファインダー)など、まさに「鉄道写真を撮るために生まれてきたカメラ」ですね。今回はEOS R5のレビューと、おすすめしたいアクセサリーについて語りましょう。
公開日:2020/9/8 / 最終更新日:2022/7/21
鉄道写真家の長根広和です。EOS R5は最高約12コマ/秒のメカシャッター、信頼できるAFシステム、そして「動きもの」でもなめらかに表示するEVF(電子ビューファインダー)など、まさに「鉄道写真を撮るために生まれてきたカメラ」ですね。今回はEOS R5のレビューと、おすすめしたいアクセサリーについて語りましょう。
【写真家紹介】
長根広和(ながね・ひろかず)
1974年、神奈川県横浜市生まれ。鉄道写真家・真島満秀氏に師事。鉄道会社のビジュアルポスターやカレンダー、時刻表表紙写真などを手がける。車両そのものの機能美や力強さを表現した写真に定評がある一方、ドラマチックな「鉄道風景写真」にファンが多い。「列車の音が聞こえてくるような作品」がモットー。
長根 広和氏 ホームページへ
長根 広和氏EOS学園ページへ
写真家にとって驚きのスペックを数多く盛りこんだEOS R5。実際に撮影してみて、特に私が「すごい!」と感じた機能をピックアップして紹介しましょう。
◎メカシャッターで最高約12コマ/秒の連写性能搭載
鉄道撮影において高速連写性能はとても重要。高速で走る列車を理想の位置でとらえるためには、カメラの連写性能の力を借りるのが一番です。
風景の中に列車をちょこんと配置する「鉄道風景写真」では、5〜8コマ/秒程度あれば十分ですが、車両に寄った撮影をする場合は10コマ/秒は欲しい。新幹線の撮影では、それでも足りないぐらいです。速ければ速いほどうれしい。
10コマ/秒以上の連写性能を備えるカメラというと、EOS-1D X Mark IIIやEOS 7D Mark IIといった一眼レフカメラがメインでしたが、ついにフルサイズミラーレスカメラのEOS R5が実現してくれました。しかも、約4500万画素という高画素で撮れる。このスペックは、かなり前から私の理想でした。EOS R5で、ついに実現されたのです。
連写を使わずにワンショットで理想の写真を撮るアプローチもありますが、鉄道撮影ではカメラの連写性能を利用して、確実に理想に近い一枚を「後で選ぶ」という撮り方をおすすめします。
◎広いAF測距エリアと信頼できるサーボAFに感動!
私はEOS R(2018年10月発売)の登場とともに、一眼レフから完全にミラーレスへ移行しました。ミラーレスカメラのAF測距エリアの広さが、鉄道撮影をするうえでメリットだったからです。
車両をメインにとらえる編成写真では、下の作例のように列車の「顔」を画面の左右いずれかに配置します。こういったシーンではサーボAFは使わず、ほぼ「置きピン」で撮影していました。
EOS R5なら、AF測距エリアはほぼ100%、画面のすべて。ゾーンAFを選択して測距エリアを列車の顔にピッタリはまるように配置できます。さらにサーボAFの性能が驚くほど進化しているので、カメラ任せで確実にピントばっちりの写真が撮れます。しかもメカシャッター最高約12コマ/秒でありながら、高精度なAFを実現。本当に信頼できるAF性能です。
◎流し撮りもバッチリ撮れる美しいEVF(電子ビューファインダー)
「ミラーレスより、やっぱり一眼レフでは?」と言われてしまいがちだったシーンは、鉄道の「流し撮り」。確かに、表示にタイムラグが生じることがあるEVFでは、「動きもの」が撮りにくいケースがありました。
しかし、EOS R5のEVFは表示フレームレートがEOS Rの約2倍になり、ほぼ一眼レフと変わらない感覚で撮影できます。列車の流し撮りもバッチリです。
EVFのメリットは、夜間や薄暗いシーンでのイメージのつかみやすさです。一度ミラーレスカメラで夜間撮影をしたら、もう一眼レフには戻れないかもしれません。一眼レフなら試し撮り→背面モニターで確認という撮り方になりますが、EVFではファインダーに見えた画像がそのまま作品になります。暗いシーンでも確実に構図が作れて、テスト撮影することなくそのまま撮影に入れます。
タテ構図で撮影することも多い鉄道撮影。便利なのがEOS R5/EOS R6専用のバッテリーグリップ「BG-R10」です。タテ構図撮影時でも握りやすい設計によりホールディングが安定。手ブレ防止につながるだけでなく、タテ構図での流し撮りの成功率も上がるでしょう。
また、バッテリーグリップは充電容量を確保する意味でも重要。小さいボディーに高性能が詰まったEOS R5は電力を多く使います。約12コマ/秒の連続撮影性能を少しでも長く維持するためには、2個のバッテリーパック(LP-E6NHなど)を入れられるバッテリーグリップを利用すると安心。ボディー全体が少し大きくなりますが、私にとって必須の鉄道撮影アイテムです。
私が撮影で最も大切にしているのは「写真は四隅」ということ。構図の四隅がいかにしっかりと決まっているか。それが写真の善し悪しに直結します。そのために三脚を利用して、確実なフレーミングをしたいのです。持ち運びが多少不便であっても、頑丈な三脚がおすすめです。
スローシャッター撮影ではリモートスイッチを使用して、カメラブレを起こさないように心掛けます。また、シャッターチャンスが少ない鉄道撮影では「2台同時撮影」をすることがよくあります。「ヨコ&タテ」の構図違いや、「望遠&広角」の画角違いといった撮り分けです。そんな撮影でもリモートスイッチが活躍します。
三脚はくれぐれも撮影マナーを守ったうえで使用しましょう。三脚使用が難しい場合は、手持ち撮影に切り替えることが大切。EOS R5なら強力な手ブレ補正システムがありますので……。
晴天であっても、空がにごった感じに写ることがあります。そんなときはPLフィルターを使用して大気中の乱反射を抑えることで、空の「抜け感」を表現できます。PLフィルターは順光で使用すると効果が最大となりますが、最大の効果からちょっと弱めたぐらいが自然な雰囲気になるでしょう。
これまで動きものの撮影では、PLフィルターは敬遠されていました。最大2絞り分暗くなってしまい、高速シャッターを求める撮影では不利になってしまうからです。このケンコー「ZX(ゼクロス)」は、最大1絞り分しか暗くならないのが素晴らしく、さらにEOS R5の高感度性能と併せれば、気軽にPLフィルターが使えます。
PLフィルターは随時使用するフィルターではありませんが、撮影意図や使用条件がはまったときに使うと効果てきめんです。カメラバッグに一枚入れておくといいでしょう。
私がずっと心の中で思い描いていたスペックのカメラEOS R5は、鉄道撮影にとって「最強のEOS」といっても過言ではありません。EOS R5が最高のパフォーマンスを発揮してくれる。だから私たちは想像力をさらに磨いて撮らなくてはなりません。もう「カメラのせい」にはできないのです。自身の感性が、そのまま写真表現できる時代の到来ですね。
EOS R5/EOS R6専用のバッテリーグリップ「BG-R10」はタテ構図撮影時でも握りやすい設計によりホールディングが安定。手ブレ防止につながるだけでなく、タテ構図での流し撮りの成功率も上がるでしょう。