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就業規則の作成は必要?個人事業主が従業員を雇用する場合のルールについて

事業が順調に伸びて従業員が増えた場合、従業員の管理が必要になります。また、従業員の数によっては、就業規則を作成する義務も発生します。
今回は、個人事業主において就業規則の作成が必要になる場合と、具体的な内容についてご紹介します。

就業規則とは?

就業規則とは、従業員の労働条件や就業上のルール(労働時間・休日・休暇・給与の支払日をはじめ、定年・退職・解雇など)について、あらかじめ定めたものです。

個人事業主は就業規則を作成する義務がある?

労働基準法第89条では、「従業員を10人以上雇っている事業所では個人・法人いずれの場合も就業規則を作成する必要がある」と、定められています。
そのため、個人事業主であっても従業員を10人以上雇用している場合は、就業規則を作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。

労働条件の明示について

上でご説明したように、従業員が10人未満の場合は就業規則を作成する必要はありません。しかし、従業員を雇用する場合、労働条件の明示は必要です。
労働条件は労働基準法に規定されています。正社員やパート・アルバイトなどの雇用形態にかかわらず、従業員を雇用するときには、労働条件通知書に記載のうえ、本人にそれを明示する義務が発生します。

ここでは、従業員を雇用する際、書面で明示する必要がある労働条件の6つの項目について、ご紹介します。

  • 労働契約の期間
    基本的には雇用を開始した年月日からの雇用期間を記載します。また、試用期間がある場合や有期労働契約の場合、以下内容についても明記します。
    • 試用期間がある場合=試用の期間、本採用と異なる条件があればその内容(給与額等)
    • 有期労働契約の場合=期間の定め(期限)、契約更新の有無やそれを判断する内容
  • 就業場所
    勤務地が複数にわたる場合には、その場所で行う業務の内容や具体的な職種について明記します。それぞれの場所を書かなければなりません。
  • 労働時間
    労働時間、始業時刻と終業時刻、所定の時間外労働の有無などについて明記します。
    労働基準法では1日8時間以内、1週40時間以内の労働が原則のため、シフト勤務の場合もその範囲内でおさまるように設定します。

    なお、労働時間が6時間を超えたら、45分の休憩時間を設けなければなりません。労働時間が8時間を超えた場合には、60分確保する必要があります。
  • 休日・休暇
    従業員の休日は、毎週1日以上、または4週あたり4日以上確保しなければなりません。
    また、年次有給休暇の日数は、法で定められた日数以上の休日数を記載する必要があります。基本的には6カ月以上の勤務期間、全労働日数の8割以上の出勤、という2つの要件で年次有給休暇が発生し、勤続年数が増えるごとに勤続期間に応じた日数で年次有給休暇を与えます。

    年次有給休暇のほかに、休日出勤した場合の代替休暇(代休)、生理休暇、産前産後の休業(産休)、育児休業(育休)、慶弔休暇などに関しても定めます。
  • 賃金
    賃金については、賃金を構成する要素(基本給、諸手当、割増賃金など)を明示し、諸手当の具体的な金額、時間外の割増賃金の計算方法を記載します。昇給に関する事項は法律上明示する義務はありませんが、昇給時期や判断基準について示しておくことは雇用関係の安定につながります。

    また、出来高払いなど変則的な賃金規定に基づいて支給する場合には、事業所が所在する都道府県の最低賃金を下回らないようにする必要があります。
    賃金の締め日と支払日についても具体的な日付を記載してください。
  • 退職に関する事項
    定年退職に関しては、定年の年齢・継続雇用制度の有無、自己都合による退職に関しては、承認する要件や手続き内容を記載します。
    退職金を支払う義務は法律上ありません。しかし、退職金を支払う場合は適用される労働者の範囲、退職金の計算及び支払い方法、支払い時期について就業規則に定める必要があります。
  • 解雇に関する事項
    解雇に関する事項は「退職に関する事項」に記載します。解雇に該当する具体的な要件を明示する必要があります。一般的には、「職責に関する要件」「規律違反に関する要件」「経営上の必要性による要件」の大きく3つに分けられます。

    解雇予告は法律上、30日以上前の解雇予告通知が義務付けられています。30日以上前に解雇予告を通知しなかった場合、解雇予告手当を支払わなければなりません。
    就業規則には、適用外となる条件(労働者側に原因があった場合、試用期間中であり採用後14日に満たない場合、天災事変やそのほかやむを得ない事由など)を記載したうえで、解雇予告に関する事項を明示します。

ポイント

  • 就業規則とは従業員の労働条件や業務上のルールを定めたものである
  • 従業員を10以上雇用する場合は、就業規則を作成して労働基準監督署に届け出る義務がある
  • 従業員が10人未満の場合、労働基準監督署への提出義務はないが、雇用する際、労働条件を明示する必要がある
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